カネのマネジメントコントロールの設計(前編)
マネジメントコントロールの対象には様々な領域がありますけれども、その代表の一つに「カネ」があります。では、カネのマネジメントコントロールを設計する際、どのような点に留意すればよいでしょうか。私は、二つの点に留意します。それは、①ルールの妥当性である正当性、②ルール遵守を担保する準拠性です。今回のコラムでは、前者について考えてみます。
1.簿記データの完全性 会社内では、複式簿記によって同時に二つのカネに関するデータをコンピュータに入力することになります。したがって、「同時に発生する二つのデータを同じチーム、同じタイミングで行わない」ことを基本とします。たとえば、売上データは販売部門で、売掛金データは本社スタッフ部門で入力するといった感じです。
2.決済 簿記データに対して、入力者とともに「決裁者」という概念を作ります。そのうえで、データ発生元、入力者、決裁者を物理的に離しておきます。売上であれば、①売上データの入力者を支店のセールスパーソンではなく支店内の事務スタッフとする、②事務スタッフの決裁者を支店長ではなく本社スタッフ部門のマネージャーとするといった感じです。
3.エビデンス 簿記データの正当性を示す証拠となるものを保管します。売上のエビデンスであれば、①受領書、②請求書控、③契約書、④在庫など実物の商品といったものです。これらを、どこにどのように保管するかをルール化しておくのです。簿記データとエビデンスは、当然のように隔離します。
カネのマネジメントコントロールにとって、最大のリスクは不正です。したがって、カネの不正を発見できるルールをいかにして作るかに留意するとよいと思います。次回のコラムでは、ルール遵守を担保する準拠性について考えます。