誰が競争相手か
競争戦略とは、「相手との違いをつくり、またそれを利用してゲームの展開を自分に有利にもっていくこと」にほかなりません。その違いは画期的な新製品の開発を行ったり、流通チャネルの支配力の差を利用したり、とさまざまです。しかしそのエッセンスは、「相手との違い」にあります。「相手との違い」が競争戦略のエッセンスである以上、その相手が誰であるかが明確になっていること、また「相手」を取り違えていないことは、的確な戦略の発想のためにもっとも基本的なことになります。しかし、「誰が競争相手か」を考える際には、本質的で柔軟な思考が必要になります。
例として、フィットネスクラブを考えてみましょう。先ず競争相手として思い浮かぶのは、同一製品の生産者です。フィットネスクラブの場合、同じ地域の別なフィットネスクラブになります。次に、機能上の代替製品です。家庭用フィットネス機器を購入して自宅で運動することは、健康や体力の維持・向上を目的としてフィットネスクラブで行う運動の代替になります。最後に、目的は同一だがまったく異なる製品の生産者です。健康や体力の維持・向上が目的であればダイエット食品の生産者を、暇つぶしが目的であれば同一地域のパチンコ店を競争相手として考えるべきかもしれません。
このように、競争相手は実に広範に存在するのです。したがって、もっと広い目で競争相手を考えなければ、顧客の需要の本当の奪い合いに参加すらできないことになります。とくに「機能上の代替製品」「目的は同一だがまったく異なる製品の生産者」は、時として見落とされがちなので注意を要します。その見落としの結果、誤った戦略対応がつくられることのダメージの大きさはいうまでもないでしょう。
「誰が競争相手か」を考える際には、本質的で柔軟な思考が必要になるのです。