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非財務情報にも目を向けて企業における価値創造の全体像を把握する

本日のコラムでは、外部の利害関係者が非財務情報にも目を向けて企業における価値創造の全体像を把握する必要性について考えます。

1.企業の正しい評価に役立つ非財務情報 投資家や金融機関などの外部利害関係者が将来の財務状況を予測する目的で企業を外部から正しく評価するには、どうしたらよいと思いますか。答えは“非財務情報にも目を向けて企業における価値創造の全体像を把握するとよいのではないか”、と筆者は考えています。ちなみに、非財務情報とはビジョンや戦略、ビジネスモデル、無形資産など企業にとって価値創造の源泉となる情報を指します。ところで、なぜ非財務情報にも目を向ける必要があるのでしょうか。以下でその理由を説明していきましょう。

2.非財務情報にも目を向ける理由 (1)健康状態の良し悪しという結果の把握 まず、将来の財務状況を予測する目的を外部利害関係者ごとに整理してみます。目的には、①投資家であれば投資の意思決定に役立てるため、②金融機関であれば融資の意思決定に役立てるため、があるでしょう。そこで、外部利害関係者としては、決算資料を入手して現状の財務状況を分析するという行動に移ります。そして、業界平均値やライバル企業といったベンチマークとの比較、あるいは同一企業における時系列推移より“企業の健康状態の良し悪し”という評価結果を得ます。

(2)情報不足の状態で行う将来の財務状況の予測 評価結果を得た後、どうしますか。評価結果に注目して①財務モデルを構築し、②『このペースで成長するであろう』などと前提を置き、③スプレッドシートを用いて将来の財務状況を予測するシミュレーションを実行する、でしょうか。『その通り』という方、次のことも考えてみませんか。それは、“結果を生む行動にも目を向けて、その企業にとってビジネスの永続性を支えたり進展を阻害する構成要素を洞察する。そして、洞察結果に照らして前提の妥当性を検証する。”、ということです。

(3)受け手へ与える前提の説得力を高める洞察 提案する理由は、報告の受け手に対して、送り手の下した意思決定の根拠となる前提の説得力を高めるためです。例えば、『過去のパターンより財務モデルを作ってシミュレーションしました』より『この企業には、事業の維持発展に欠かせない○○という推進力があります。しかも、それはライバル企業にはマネのできない独自の資源なのです。以上の定性要因を考慮してシミュレーションの前提を置きました。』、と言われ方が受け手へ与える説得力も高まりますよね。

(4)送り手の洞察を深める非財務情報 それでは、前提の説得力を高めるために何をすればよいでしょうか。それには二つのことをやればよい、と筆者は考えています。一つ目は、企業経営の根幹に関わる情報の把握です。これは財務情報の源泉となる情報で、“非財務情報”に相当します。二つ目は、企業における価値創造の全体像の把握です。財務情報を“結果”、非財務情報を“原因”とした因果関係の洞察により企業における価値創造の全体像を把握するのです。非財務情報にも目を向ける必要性を少しは感じていただけたでしょうか。

(5)主張と理由を支える事実資料の紹介 ここで、筆者の主張と理由を支える事実資料を一つご紹介します。それは、一般社団法人日本IR協議会公表の「2017年度IR活動の実態調査」です。この調査によると、『統合報告書 ― 統合報告書を作成している企業は年々増加、今後も増加見込み』とあります。要するに、非財務情報にも目を向ける投資家が増えているのです。ちなみに、統合報告書とは、売上などの財務情報とガバナンスや中長期的な経営戦略までを含む非財務情報を投資家向けにまとめたものです。

〔一般社団法人日本IR協議会「2017年度IR活動の実態調査」〕 https://www.jira.or.jp/file/topics_file1_41.pdf

3.最後に 非財務情報には、財務情報の源泉となる多くの重要な情報が含まれています。だから、『時間が掛かる』あるいは『面倒くさい』と敬遠せず、財務情報と組み合わせてバランスのとれた将来予測につなげてください。

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