上場企業は成長し続けないといけないのか
本日のコラムでは、上場企業は成長し続けないといけないのかについて考えます。
1.内部留保を行うと成長が必要になる 便宜的に、①借入金がない、②株主資本コストは9%、③純資産100億円の企業を想定します。この企業は、初年度に株主資本コストをカバーする収益9億円を上げました。もしこの収益を全額内部留保とした場合、純資産109億円で翌年度をスタートするこの企業は、株主資本コストをカバーするために9.81億円(109億円×9%)の収益を出す必要があります。つまり、収益を前年比約10%成長させないとならないわけです。
2.利益を全額配当に回すと成長は不要になる もしこの企業が初年度の終わりに収益9億円を全額配当に回して純資産を増加させなかったとしたら、翌年度はどうなったでしょうか。初年度と同様に純資産100億円で翌年度をスタートするので、株主資本コストをカバーするための収益は初年度と同様に9億円(100億円×9%)で十分です。したがって、この場合、収益を前年比で成長させる必要はありません。
上場企業の責務は、株主資本コストをカバーする収益を生み続けることです。したがって、内部留保を行ったなら、上場企業は積み上がった収益部分の現金も使って株主資本コストをカバーするための収益を上げることを株主より求められます。つまり、成長し続けないとならないわけです。